改善の成功精度を高める“バーチャル改善”

プレス工場の改善活動を知識化する取り組み

エキスパートエンジニア

愛知県経営者協会 元デンソー・生産技術センター 
光行 恵司

ナレッジエンジニア

株式会社レクサー・リサーチ 
金子和樹

背景

製造業各社にとって、生産システムを継続的に改善し競争力を維持することは不可欠です。

改善活動には、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)やQC7つ道具など代表的な手法があり、多くの企業が各種技法の啓発・実践に取り組んでいます。しかし、現場の改善活動には、失敗が多く、課題があります。
 ・ 個別改善が生産システム全体の能力向上につながらない
 ・ 時間・人手をかけても成果が合わない
 ・ 改善効果が「やってみるまで分からない」

生産シミュレーションは生産システム改善の計画段階では使われていますが、改善活動での活用事例は少なく、ノウハウが確立していません。そこで、改善策の効果を事前に評価し、成功確度の高い改善だけを実行する仕組みが求められます。

目的

この取組の目的は、プレス工場における改善活動を担当者の経験に依存せず、再現可能なノウハウとして、CW上に体系化することです。
生産シミュレーションを活用して改善策を事前評価し、成功の見込みが高い改善策を現場で実行する“バーチャル改善” を実現します。生産システムの改善活動は

•       作業場レベル
•       ラインレベル
•       工場レベル

の3階層で行われるものとし、上位階層の改善目標を下位階層に伝え、下位階層の実現可能性を上位にフィードバックする階層型の改善モデル とします(図1)。

図1.工場モデル(左)と改善活動モデル(右)

そして、各レベルの改善活動を、改善活動のフレームワーク(図2)に沿って行います。ポイントは、改善策を決定した後で生産シミュレーションを使ったバーチャル改善を行い、成功率が高い改善策のみを現実の改善で実行することです。

狙い

プレス工場の工程内在庫を削減することを狙いとします。
在庫削減は在庫管理コストの削減・在庫の不良資産化の抑制・キャッシュフロー健全化などの観点から経営的価値の大きい成果です。

対象業務とその位置づけ

 対象は、工場全体を管理する業務で、

•          工場全体の目標設定
•          問題点の明確化
•          改善策の立案
•          各部門への指示

を行います。
工場全体の管理が適切でないと、部門個別の改善が無駄になったり、従業員の意欲低下などの恐れがあるため、工場全体の改善を正しく導くことは極めて重要です。

使用する人の想定

この事例におけるノウハウの主たる使用者は、工場全体の改善をリードする製造部長や工場長クラスです。実際には、このクラスをリーダーとする工場改善チームが存在し、チーム全体でノウハウを実行することを想定しています。

取組と期待

プレス工場の実際のレイアウトや稼働データに基づくシミュレーションモデルを作成し、注文リードタイムの短縮や在庫の削減が可能な改善策の導出を行うことに取り組んでいます。
プレス工場の管理者・担当者がCWプラットフォームとシミュレーションを活用して効率的に工場全体の能力を向上させる方法を理解すること、シミュレーションを活用した生産管理業務(生産計画・負荷調整)に向けた展開、他のプレス工場への展開が期待できます。

参考文献

K. Mitsuyuki, S. Reis, F. Kubota, Y. Fukuda, E. Arai, Manufacturing System Simulation Environment for KAIZEN Activities Based on the Operation Data, The 36th CIRP-International Seminar on Manufacturing Systems, Saarbruecken, Germany, 2003.

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