工程設計の“思考”を見える化し、若手が自律的に設計できる未来へ

エキスパートエンジニア
元デンソー 生産技術センター
原田 浩史 氏

ナレッジエンジニア
株式会社レクサー・リサーチ
久蔵 宏幸
目的
製造業では自動化が急速に進み、省人化・自動化工場が増えています。
しかし、その成否を握る工程設計は、いまだに個々の生産技術者の経験や勘に依存しているのが現状です。そこで、この取組は、生産システムの工程設計において
CWを活用した検討プロセス・判断基準・経験知の体系化、デジタル化;
- 工程設計の論理的な思考プロセスを明確化
- 製品特性・生産量・生産地などの条件に応じた検討プロセスと判断基準を整理
- 経験知をデジタル記述(PD3)で形式知化
- 若手でも一定品質の工程設計ができる環境を整備
をすることで、費用対効果の高い最適な工程設計へ導くシステムを構築し、属人化を解消し、製造業全体の生産性・競争力向上に貢献することを目指しています。
狙い
工程設計の際の検討対象は多岐にわたります(図1)が、本取組では、その中で比較的論理的に整理しやすい「ライン工程編成」 に焦点を当てています。

図 1 自動化生産システムの全体像とライン工程編成の位置付け
対象を入社3〜5年目の若手社員とし、彼らが、
- 適切な工程順序を決め
- 必要な自動化設備を適切に選定し
- ムダのない工程案を立案できる
ようになることを狙いとしています。重要なのは、単に設備候補を提示するのではなく、「なぜその選定に至ったのか」 を理解・追体験できることです。これによって、若手が自律的に設計判断できる人GA材へ成長することを期待しています。
取組の背景
自動化ラインの工程設計には、対象製品の流動機種選定、ライン能力設定、自動化度、組立機器選定、稼働率など多くの検討項目があります。特に ラインを構成する自動化機器の選定は経験知への依存度が強く、若手が参画しにくい領域で、
- 初期段階に専門家の工数が集中
- 設計根拠が共有されず属人化
- 若手育成が進まない
- ベテランの減少で経験知が失われる危機
といった課題が顕在化しています。従って、有識者の知見をCWで体系化し、誰でも参照できる形にすることは大きな意義があります。
対象業務とその位置づけ
本取組の対象業務は、工業製品の製造ライン設計における組立プロセスと自動化機器選定の初期案作成です。この初期案は、
- 品質
- 投資効果
- 稼働率
などの視点で行うデザインレビューの基礎となります。
開発リードタイム短縮が求められる中、未熟練技術者でも短期間で一定品質の構想を立案できる“時間価値”を提供することが本取組の位置づけです。
使用する人の想定
主な利用者は、生産準備の経験はあるが、ライン設計や設備選定の体系的知識が不足している若手社員で
- 組立や工程の流れは理解している
- 工程設計業務に不安がある
という層を対象に、段階的に理解を深められる構成、安心して工程設計に取り組める学習・支援環境 を提供します。
取組と期待
取組の方針は、有識者の判断プロセスを「条件整理 → 選択肢の絞り込み → 評価 → 決定」の流れでガイドするWebアプリとして実装することです。これは
- 有識者の思考を PD3 で記述し明示化(図2)
- CWプラットフォームの機能を使い、利用者が画面の流れに沿って学習・選定できる仕組作成(図3)
によってプロトタイプの作成を行い、若手社員でも設備選定の検討に主体的に参加できる思考の流れを表現できることが確認されました。

図 2 PD3で記述した全自動組立ラインの設計を行うプロセス

図3 Webアプリの画面例
従来は専門家に依存していた工程設計の初期検討を、若手が主導して進められる可能性が見えてきたことで、今後、
- 若手育成の加速
- 経験知の継承
- 工程設計業務の質的向上(短時間で一定品質の案を作成)
といった効果が期待されます。
また、今回整理した設備選定ナレッジは 組立工程を想定していますが、加工工程など他の工程にも展開可能です。さらに、設備選定にとどまらず、
- 工程能力評価
- レイアウト最適化(部品供給・オペレータ動線など)
など、判断基準が曖昧になりがちな他業務にも応用できる可能性があります。
そのために、実装と普及に向けて実際の設計現場での試験運用を経て、工程設計結果を起点とし、レイアウト設計やシミュレーションを活用した工程全体の効率化・最適化へと発展させるナレッジ技術の提示を目指します。


